市彫14 木造薬師如来坐像(薬園寺)

更新日:2025年04月21日

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木造薬師如来坐像(もくぞうやくしにょらいざぞう)

木造薬師如来坐像

薬園寺本尊の薬師如来像で、左手は膝上で薬壺を載せ、右手は施無畏(せむい)の印を結び、右足を外にして蓮華座に結跏趺坐(けっかふざ)しています。現在は、寛永二十一年(1644)建立の本堂(奈良県指定文化財)の中央厨子に安置されています。
小さな頭部に対して、上半身が長い体形で、胸くびれを上方に、腹部を大きく造り、これを低く広い両膝が受けて、安定感に富んでいます。背筋を伸ばし、胸の厚みは浅く、腹部はだぶつき気味の肉取りで丸く膨らみ、下腹部前の両足首を深く彫り込みます。衣文は皺数が少なく、間隔をあけて、肉身の丸みにしたがって階段状に刻んでおり、鎬立つ衣文線は腹部や大腿部側面に限られます。これらの表現は平安時代中期の一木彫成像の特徴をよく備えています。一方、肉髻の頂上が尖頭に高く盛り上がり、長い頭部の下方に目鼻が配置され、上瞼が広く、鼻が小さく、抑揚の強い上唇が前に突き出るなど、平安初期(九世紀)以来の髪型および個性的な顔つきの伝統を踏襲します。
総じて本像は、前代以来の古様な顔つきを表すものの、安定感のある体形、だぶつき気味の肉取り、および衣文表現などは平安中期の特色が顕著であり、また長和二年の興福寺像とほぼ同工の構造であることを併せ考えると、製作は平安中期、十世紀末から十一世紀前半と推定されます。
奈良盆地の中央部では、平安中期において桜、樟、欅などの広葉樹材を用いた等身・坐像の展開が学術上注目されており、本像も平安中期の一木彫(坐像)の個性的な作例の一つとして高く評価すべきものであり、また大和郡山城下の寺院の本尊として伝来した点でも注目されます。

通常お寺は閉まっていますが、毎月7日9時~16時にのみ公開しています。


 

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