令和6年6月 大和川と「亀の瀬」

更新日:2024年06月01日

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市長てくてく城下町タイトル
上田清

大和郡山市長

奈良盆地を流れる156本もの川を一手に集める大和川は、生駒山地と金剛山地に挟まれ
川幅が急に狭くなる「亀の瀬」から大阪湾に向かいますが、その「亀の瀬」には大和の人びとを苦しめてきた難題が二つありました。

一つは川幅が狭いため、大雨が降ると奈良側の水位が上がってしまうこと。奈良盆地の周辺には高い山がなく、降った雨が一気に流れ出ることも関係していると言われます。

もう一つはこの地域が約4万年前から地すべりを繰り返してきたこと。地すべりという
のは土砂崩れのような表面的な崩壊ではなく、ある一定の層がまとまってゆっくりと、長期にわたって斜面を移動する現象で最大深度は約70メートルだとか。

近年では明治36年、昭和6~8年、昭和42年に発生、特に昭和7年7月には豪雨の影響により地すべりが活発化し、大和川の河床が9メートルも上昇するとともに、関西本線の亀の瀬トンネルが崩壊してしまいました。

今もし大規模な地すべりが起こると、奈良盆地は水没、さらにその水圧で亀の瀬の土砂
が崩れ、大阪側に大量の水があふれることになります。

そこで、約60年前から土や地下水を取り除く工事と約100メートルにも及ぶ巨大な杭を打ち込む工事が行われてきました。総工費は約1千億円、国家事業と言ってもいいのではないでしょうか。

昨年、現地の『亀の瀬地すべり歴史資料室』を見学したのですが、この春リニューアルオープンしたとのこと。地すべりの規模が立体的にわかるジオラマなど、あらためて見学したいと思います。

トンネルの崩壊で、線路は大和川の北から南側に移されましたが、対策工事の際に偶然発見されたトンネルの一部が公開され、プロジェクションマッピングが上映されています(要予約)。
トンネルの内部はレンガ造りで、明治期の職人の高い技術力が部分的とはいえトンネルを守ったと聞き、感動したことが強く印象に残っています。

亀の瀬地すべり歴史資料室
電話 072-978-8165