平成29年10月 二つの特別展覧会~市長てくてく城下町

更新日:2021年03月19日

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市長てくてく城下町
上田清

大和郡山市長

 時代小説などを読んでいて、郡山や郡山藩に関する話題が出てくるとうれしくなります。
 例えば、最近すっかりはまっている佐伯泰英の長編時代小説『夏目影二郎始末旅』第七巻『五家狩り』で次のような一節に出会いました。「(主人公の夏目影二郎が若いころに修行した)鏡新明智(きようしんめいち)流は、安永年間に大和郡山家の臣、桃井八郎左衛門直由(はちろうざえもんなおよし)が開祖の剣だ。」
 影二郎は架空の人物のはず(?)なので、まさかと思い、さっそく『ふるさと大和郡山歴史事典』を開いてみると、ありました!桃井直由は藩主の柳澤保光につかえた剣術指南番で、柳生や堀内など剣術四流派を極め、それらの長所を集めて鏡新明智流を創始したというのです。(歴史事典では「八郎右衛門直由」となっていますが…。)
 実在の、しかも郡山藩につかえた人物だったんですね。歴史的なことがらや人物に想像や創作を織り交ぜ、息をもつかせぬ物語が展開されていく佐伯ワールドの魅力をあらためて感じています。
 ところで、その桃井直由がつかえた柳澤保光は文人大名としても大変有名で、和歌や俳諧、茶道や書道などいずれも素人ばなれしていたといわれますが、今年がちょうど没後200年にあたることから、郡山城跡の柳沢文庫では特別展『柳澤保光』が開催されています(平成29年12月10まで)。
 一方、柳澤家初代の藩主吉里につかえた重臣で、特に絵画にすぐれ、作家の司馬遼太郎が「東洋のレオナルド・ダ・ヴィンチ」「日本史上の人間の傑作のひとりかもしれない」と絶賛した柳澤淇園(きえん)(里恭(さととも)・柳里恭(りゅうりきよう))の特別展が奈良市にある大和文華館で約50年ぶりに開催されるのも、この秋の楽しみです(平成29年10月7日~11月12日)。
 二つの特別展覧会、どうぞお出かけください。