平成19年9月21日 逆転の発想

更新日:2021年03月19日

ページID 10115
市長てくてく城下町
上田清

大和郡山市長

 秋の交通安全県民運動をひかえたある日、わが国ではおよそ信じられないニュースがインターネット上に流れました。

 ドイツ西部のボームテという街の中心部で、交通の安全性を高めるために、何と9月12日からすべての信号と標識を取り外すことを決めたというもので、しかも撤去にかかる費用120万ユーロ(約1億8800万円)の半分はEU(欧州連合)が負担するというのです。

 実はこれ、オランダの道路設計技術者ハンス・モンデルマンさんが、信号や標識がないほうが人々も慎重になり、危険を避けようとする心理が働くため、結果として事故が少なくなるという考え方から提唱した運動で、オランダばかりかすでにドイツでも実施した街があり、イギリスなどでも試験的に導入する動きがあるとか。

 その効果に疑問を持つ関係者も少なくないようですが、交通量の多い幹線道路ではもちろん撤去せず、人と車の空間をきっちり区別することも一方で重要だと考えられています。

 そういえば愛知県だったと思いますが、交通事故の多発で悩んでいたある団地内の道路で、当たり前だと思っていたセンターラインを試みに消したところ、ドライバーがやはり慎重になったためか、事故が大幅に減ったという話を聞いた記憶があります。確かに信号機などが整備され、きちんとルールが守られていれば安全でしょうが、逆にルールに従ってさえいれば安心だという思い込みが悲惨な事故につながる事例も決して少なくないのではないでしょうか。

 果たしてこういう考え方がわが国で受け入れられるかどうかわかりません。しかし撤去後、重大な事故は起こっていないという報告もあるようで、そのまま取り入れることは現状では困難かも知れませんが、逆転の発想というか、豊かな発想や考え方は本市のまちづくりにおいても大いに発揮したいものだと考えているところです。