平成18年1月20日 八十八ケ所霊場めぐり

更新日:2021年03月19日

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市長てくてく城下町
上田清

大和郡山市長

 自宅に近いこともあって、よく矢田丘陵の散策に出かけるのですが、以前から気になっていたのが、矢田寺の周辺にたたずむ石仏の数々でした。二体が仲よく並んでいるものもあるし、草むらの中で一人たたずむ石仏もあります。それぞれに「矢田山四国」という文字や、お寺の名、あるいは人名が刻まれていることはわかるものの、長い間、いったい何を意味するのか考えようともしませんでした。

 ところが、ある日「八十八ケ所霊場めぐり」と題する手書きの地図(注釈)をいただき、さっそくたどってみると、そこは矢田丘陵の自然をみごとに生かした四国八十八ケ所のミニ霊場で、四国に実在するお寺が石仏の姿で順番に再現されていることを知ったのです。
 この遍路道は大正末、大阪の方々を中心につくられたものですが、近年は訪れる人も少なくなり、仏像の一部が壊れたり、草や竹が繁茂してコースそのものがあちこちで寸断されたような格好でした。
 その後、しだいに関心を持つ方が増え、昨年発足した「矢田寺へんろみち保存会」を中心に、お寺の協力もいただき、仏像や台座の修理、樹木の伐採や草刈り、標識や案内板の設置が進められた結果、八十年余の時を経て、遍路道は復活への道を歩み出したのです。
 先日、ある仏像の前に何本ものろうそくと花が供えられていました。仏像の下部には大阪のある町名と人物の名が刻まれています。関係の方々がお集まりになったのでしょうか。

 矢田寺の閻魔(えんま)堂から出発し、一周約四.五キロメートル。起伏に富んだコースですが、所要時間は一時間半から二時間ほど。この遍路道が新たな安らぎの場として見直される日はそう遠くないように思います。

(注釈)文中の「八十八ケ所霊場めぐり」と題する手書きの地図(以下のファイルリンク参照)は、高田町在住の谷正博さんが作成されました。市商工観光課、観光協会で配布しています。