平成18年5月23日 もてなしの心

更新日:2021年03月19日

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てくてく
上田清

大和郡山市長

 お城まつりも終わって一息ついた四月二十一日、佐保川の東に沿って南北に広がる番条町へ。春とは名のみの寒い日でしたが、心あたたまる一日となりました。
 この日は毎年、番条町のお大師さんとして親しまれている行事が行われる日なのです。各家の門前にはお大師さん、つまり弘法大師の木像がお厨子に守られ出開帳されていて、それぞれに趣向をこらした精進料理とともに餅や団子が供えられていますが、訪れた人はこの餅や団子を自由にいただくことができるという、全国的にみても大変珍しい伝統行事なのではないでしょうか。
 聞くところによれば幕末も近い一八三〇(文政一三)年、当時各地で恐れられていたコレラの流行に対して村の人たちが相談し、弘法大師の木像をつくったということで、ちょうど八十八軒の家があったことから四国の八十八か所めぐりになぞらえた行事が誕生したとされています。半日もあれば八十八か所めぐりができるわけで、以来二百年近くにわたってこの出開帳が続けられてきたということですから本当に驚きです。引越しする時も、近所の家かお寺に木像を預けることになっているとか。
 最近はミニコミ誌などで知った人が遠方から訪れるケースも増えているそうで、この日も多くの出会いがありました。しかし、それ以上に嬉しく、心が和んだのは、品切れになった餅に気づき急いで補充してくださる家の方々の笑顔でした。それこそもてなしの心の原点なのではないでしょうか。