平成16年11月1日 秋の夜長を楽しく

更新日:2021年03月19日

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市長てくてく城下町
上田清

大和郡山市長

 無人島などのように、それまで人が住んだことのないところに移住し、開拓を進めようとするとき、真っ先に必要なのは「地名」だと聞いたことがあります。

 そのまま飲み水として使えそうな水が流れている川、食用きのこが自生している森、魚釣りに最適の海岸など、それぞれに具体的な名称がなければ現地に集まることができない場合もあるし、互いに交換しあう情報の内容も制限されてしまいます。そこで地名が生まれ、長く長く言い伝えられていくことになるわけですが、だからこそ、地名には何百年、あるいはそれ以上にわたる先人の思いや誇りが染みこんでいるのではないでしょうか。

 そうした意味でも大切にしなければと思うのです。市内を見ると、たとえば「美濃庄」や「伊豆七条」「丹後庄」などは、古代の国名が付いた地名として有名です。近隣では、近鉄橿原線「石見」駅がありますが、こうした地名は県内各地に残っていて、都づくりと何らかの関係があるのではないかと指摘する人もいるようです。

 あるいは、天狗伝説から生まれた「横田」「櫟枝」「千束」、ご飯伝説が残る「稗田」、古代の行政官庁があったという「今国府」、秀長時代に移された談山神社に由来する「大職冠」、領主の名を示す「筒井」や「片桐」など、あげればきりがありませんが、秋の夜長、地図を開いて、小さな旅の気分を味わいながら、地名を追いかけるのも楽しいのではないでしょうか