まちかどレポート406

更新日:2021年03月19日

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まちかどレポート

まちかどレポート406 矢田山四国~ミニ遍路道を歩いて~

(まちかどレポーター 後藤)

矢田山四国~ミニ遍路道を歩いて~(平成27年5月15日掲載)

5月11日、矢田寺裏山に広がる「矢田寺八十八ケ所へんろ道」を歩いてきました。
今年2015年は、四国で修業した弘法大師が真言密教の道場として高野山を開いて1200年目となります。
このへんろ道は四国を一周する八十八ケ所巡礼を模したミニ遍路道で、石仏の光背には「矢田山四国」と刻まれていました。

石碑と地蔵と石の階段の写真

本堂左手奥の「弘法大師八十八ケ所霊場参詣道」と彫られた石碑の立つこの地点から、一周約4.5キロ、所要時間1時間半の巡礼が始まります。
しばらく歩くと、阿波国第11番札所、藤井寺と第12番焼山寺の本尊が見えてきました。

2つの地蔵の写真

四国遍路では、11番と12番札所の間は山を2つも越える「遍路ころがし」と呼ばれ健脚でも約5時間、平均6時間もの時間を要する難所となっています。
かつてこの矢田山四国を歩いた先人たちはお大師さまや、四国の情景に思いを馳せ、巡ったのかもしれませんね。

地図の看板と獣道の写真
木に括りつけられた「がんばって前進」の白い札の写真

迷いやすい地点には案内看板や、疲れを感じるであろうポイントには「励ましの札」が備えられ、それらは巡礼者にとってはご接待のような温かさを感じます。
心地よい風を感じながら歩を進めると、もみじが太陽の光を浴びキラキラと輝いている場所にたどり着きました。

青く生い茂る山道の木漏れ日の写真
曲がりくねった山道と地蔵の木漏れ日の写真

いまの季節は青もみじがとても美しく、私たちの眼を潤してくれます。
秋にはいったいどんな雰囲気の空間になるのでしょうか?楽しみです。
矢田山四国は、距離や所要時間共にハイキングコースとしても最適ですので是非歩いてみてください。
眼下に眺望が開けてくるようになり、そろそろ休憩かなと思うとちょうどそこに小さな休憩所がありました。
この小屋はじゅっぷく小屋と名付けられています。

木造で壁がない小屋の写真

見晴らしの良い小屋からは、遠方に若草山や大仏殿を望むことができました。

遠景の街を見下ろした写真

第58番札所からは、周囲の雰囲気ががらりと変化。
辺り一面、ヒノキ林。
背の高い木々の中で、石仏が静かに佇んでいます。

ヒノキ林と地蔵の写真
遍路道ヒノキ林と地蔵の写真

へんろ道は、大阪など各地の信徒らが大正末に作ったとされています。
また、昭和7年には高野山の管長が駕籠に乗って一体ずつ開眼供養を行ったと寺に伝わっているそうです。
しかし戦後、山での作業が減るとへんろ道はしだいに荒廃してしまいました。
2003年地元の方が一万本の木を伐採し、さらに2005年からは「矢田寺へんろ道保存会」の方々が中心となって倒れた石仏を起こしたり、草刈り等の整備を約10年の歳月をかけて続けてこられました。
また、もみじが多く植わっていたのは「へんろ道をもみじの名所に」という思いから、会の方々が植樹されたものです。心ある方々の努力が今こうして、訪れる者の眼を楽しませてくれています。
そろそろ結願という時に、木々の間から矢田の集落が見えました。

遠景の景色の写真

いつも見る矢田の里も少し高い所からみると随分雰囲気が違います。
のどかで、豊かな空気が眼下には流れています。

「あじさい寺」として有名な矢田寺。
色とりどりのあじさい達が、もうすぐ私たちを楽しませてくれるでしょう。
本堂裏山にミニ遍路が作られたいきさつなど、矢田寺周辺はあじさいだけでは終わらない魅力が眠っています。矢田寺八十八ケ所へんろ道を歩いて、さらに大和郡山の惹きつけられた感じです。
ミニ遍路道は季節をかえて訪れたくなる、素敵なところでした。