まちかどレポート394

更新日:2021年03月19日

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まちかどレポート

まちかどレポート394 澄んだ心の原石~いちご農家を訪ねて~

(まちかどレポーター 後藤)

澄んだ心の原石~いちご農家を訪ねて~(平成26年12月19日掲載)

年の瀬も迫り、日ごとに寒くなってきました。
そんなこの時期に市場に顔を出す、みんなの人気者がいます。
そう、赤い宝石「いちご」です。

12月15日、そろそろ旬を迎えお忙しくされている中、大和郡山市城町のいちご農家「佃善憲さんご家族」を取材させていただきました。

ビニールハウス内のいちごの畑の様子の写真

写真は、佃さんのいちごハウスです。

私は今まで春先のいちご狩りの経験しかなく、この時期のハウスに入らせていただくのは、実は初体験。
子どものようにワクワクしながら入ると、外気温との差で掛けていたメガネが一瞬くもる程、ハウスの中は暖かい空気で満ちていました。

予想よりも暖かくしてあり、これがこの日の一番目の発見です。

今の時期、ハウスの中の温度設定は28度にしていると、専業農家を継いでおられる佃善憲さんが後で教えてくださいました。

私と共にハウスまで同行くださいましたのは、出荷作業でお忙しくされている旦那さまに代わり、奥さまの真紀子さんでした。

いちごの花と実の写真

写真中央に見える白く小さな花がいちごの花。
なるほど!愛らしいいちごらしく、花までキュートです。

そしてこの日、2番目の発見はいちごが「バラ科に属する」ということ!
全てにおいて可愛らしいところは、バラ科だと聞いても納得ですね。

花の中央にある黄色いところが徐々に大きくなったものが、私たちの食べるいちごになります。

ビニールハウス内に広がる畑の写真
ビニールハウス内に広がるいちご畑の写真

佃さんの農園では、奈良県の代表品種である「あすかルビー」と「古都華(ことか)」をおおよそ7:3の割合で作付けしているそうです。
奥さまの話によると、古都華の食感は一言で表すと「ぶどうみたい」とのこと。
味が濃く、糖度が高いのが古都華の特徴で、甘いいちごが好みの方は古都華を買い求める方が多いといいます。
そして、大きいものほど需要があるそうで私も取材中、何度も大きないちごに目が奪われました。

しかしそんな古都華、なかなか栽培は難しいそうですよ。
あすかルビーと比較すると、古都華の茎は温度に敏感なのか背筋を「ピン」と伸ばし立っているように見え、葉の色も濃いように感じました。
深みのある古都華の色と比例しているのでしょうか。

品種によって随分と違いがあるのですね。
と、次々と新しい発見ばかりでした。

土から生えるいちごの写真

一年のうちで最も寒い2月ごろがいちばん忙しく、夜遅くまでいちごの出荷作業に追われ、寒さで手がかじかんだりして思うように動かないこともあるといいます。

そんなピリピリとした家族の様子も、気さくに様々なエピソードをまじえ話してくださりながら、私たちはハウスから作業場に戻りました。

直売所も兼ねた作業場に戻ると、佃さんのお母さまが選別作業の最中でした。

机に向き合う人の写真

その傍らで、あまり表情を変えずに黙々と手を動かし作業をされる旦那さまと、笑顔で私の質問に答えてくださる奥さま。

農業については右も左もわからず、若くして専業農家に嫁いでこられた元気な方です。
いちご作りには欠かせない蜂に目を刺された事など、今までの思い出を取材中に教えてくださいました。
そんな奥さまが農家に嫁ぐことについては、周囲から色々なアドバイスをいただいたそうです。

人のあぜ道を歩く女性の写真
畑内に設置された木製の箱の写真
屋外に広がる畑の写真

でも、「旦那さまの人柄に惹かれて、ここに来ると決意した」とかつて、営業のお仕事をされていたことを物語るような明るい前向きな表情でおっしゃっていました。
しっかりとした印象を受けるその表情の奥には、硬くなった土を柔らかく解きほぐすような、しなやかさも感じました。

昭和50年代生まれの私と同世代とは思えない程、落ち着きのあるご夫婦。
そんなお2人の姿に、一緒に仕事をされているお母さまも安心して作業を任せておられるようでした。

情報が飛び交い、すばやい対応が求められる今日。
つながろうと思えば簡単に、つながり合える時代です。

そんな昨今に原点となり、重要なのは「自分を信じ、物事を見極める力」。
もっと言えば「信じ、貫ける力」ではないかと、今回の取材でさらに感じました。

農業と家族を大切に、自身の選択した道に迷いはないという思いが、言葉では仰いませんでしたが、その後ろ姿から感じ取ることができます。

これから旬を迎えるいちご。
ぜひ、奈良県産いちごを手に取っていただき、生産者の方々にも心を寄せていただきましたら…と思います。

真っ赤ないちご。
皆を楽しませる甘い、赤い宝石は農業に携わる生産者の「澄んだ心の原石」あってこそ、さらに甘みが増すのではないかと師走の寒空の下、ふと感じた一日でした。