まちかどレポート296

更新日:2021年03月19日

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まちかどレポート

まちかどレポート296 第16回 地震火災フォーラム「大和郡山から歴史の風が吹く」

(まちかどレポーター 丸山)

第16回 地震火災フォーラム「大和郡山から歴史の風が吹く」(平成24年12月4日掲載)

地震や火災などの災害から文化財を守ろうと、第16回地震・火災フォーラムが11月17日午後1時から、イオンモール大和郡山2階のイオンホールで開かれました。
当日は寒く、冷たい雨が降りしきる中、熱心な皆さんが約250人の参加です。

当フォーラムの県内開催は奈良市に次いで2回目との事。「古事記」編纂1300年の今年は「大和郡山から歴史の風が吹く “言の葉遺産”の魅力を語ろう」がテーマでした。
主催は「地震火災から文化財を守る協議会」と「NPO災害から文化財を守る会」「奈良・災害から文化財を守る会」です。
今回は「古事記」「日本書紀」「万葉集」という「言葉の文化遺産」に焦点を当てたとの説明がありました。

スクリーンを背景に挨拶を行うスーツ姿の男性の写真

土岐立命館大学教授(NPO災害から文化財を守る会会長)の挨拶でフォーラムが始まりました。

片手でマイクを持ちながら挨拶を行うスーツ姿の男性の写真

地震・火災フォーラム開催にあたり上田市長の歓迎挨拶を受けました。

迷彩服を着てトランペット演奏を行う男性たちの写真

自衛隊京都大久保駐屯地の隊員による東日本大震 鎮魂のトランペットによる演奏

基調講演は、映画監督の篠田正浩さんで講演タイトルは「私の万葉体験」です。

篠田監督は、第二次世界大戦後に古事記や日本書紀を読み、特に万葉集の中で、大伴家持の歌に感銘を受けたそうです。
僕が特に関心したのは、第二次大戦中に放送に利用され、国民の戦闘意欲高揚を意図した曲の歌詞の解釈・解説でした。
その歌詞は、
 「海行かば 水漬(みづ)く屍(かばね) 山行かば 草生(くさむ)す屍
 大君の 辺にこそ死なめ 返り見はせじ(長閑(のど)には死なじ)」です。

この歌詞は、万葉歌人である大伴家持が「陸奥国に金を出す詔書を賀す歌一首、并せて短歌」として万葉集(巻18-4094番)で歌い上げたものです。しかしながら、戦時中、万葉歌の持つ本来の意味合いが、国民の戦闘意欲高揚の手段として「出征兵士を送る歌」等に政治的に歪曲・利用されたそうです。
古事記と同様に万葉集も戦争時に政治的に利用されていたことが良く分かりました。
平和な現代に生きる私達にとって、万葉集を深く読む事で「人の心の豊かさ」や「高貴さ」等を知ることができますと仰っておられました。

いずれにしても、篠田監督の万葉集や古事記及び続日本紀についての造詣の深さには頭が下がりました。
改めて、「もっと勉強せんとあかん」と再確認しました。

白いテーブルクロスのひかれた長机に座りながらパネルディスカッションをする人たちの写真

パネルディスカッションの様子

パネル討論には、万葉文化館の井上さやかさん、古事記1300年紀事業実行委員長の橋本弘隆さん、奈文研所長の松村恵司さんでした。コーディネーターは「NPO災害から文化財を守る会」理事長の土岐憲三・立命館大教授でした。

長机に座りながらマイクを手に万葉集の解説をする女性の写真

井上さやか万葉文化館主任研究員はこの日も、熱く万葉集を語っていました。

万葉文化館の井上さんは「今回のフォーラムに参加するので調べてみると、日本書紀には災害が数多く取り上げられているのに、万葉集にはまったく登場しない」、「万葉集等の歌というものは、史実を詠むものではなく、心の中の真実を表現しているのです。」等々興味深く話されていました。

奈良文化財研究の松村恵司所長からは、国指定・選定・登録文化財だけで744件以上が被災した東日本大震災の文化財レスキュー事業について報告がありました。

言の葉遺産(古事記・万葉集・日本書紀等々)の魅力と災害から文化財を守る事の大切さを再確認した一日でした。

台風12号災害派遣、東日本大震災派遣に関するパネル展示に集まる人たちの写真

台風12号災害派遣と東日本大震災派遣に関するパネル展示

東日本大震災被災地の様子を撮影した展示パネルの写真

東日本大震災被災地の支援写真展示

階段下に飾られる装飾の施されたクリスマスツリーの写真

クリスマスツリーの良く似合う季節になりましたね