西市

平城京右京八条二坊内につくられた官営の市場。左京八条三坊内にあった東市とならんで平城京の生活物資の流通と商業の中心であった。
『続日本紀』和銅5年(712)12月の条に「己酉、東西二市始置、史生、各二員」の記事がある。このころ市が開かれたのでろう。市は「財貨の交易、器物の真偽、度量の軽重、売買の估価、を司る」『養老職員令』と決められていた。
九条町に市田と呼ぶ小字があり、その辺りが西市跡であることは間違いない。その大きさについては約7万平方bの面積があったと推定されている。
当時の庶民が西市を利用していたことは『万葉集』に「西の市にただ独り出でて眼並べず 買へりし絹の商じこりかも」の一首が収載されていることからも充分に想像される。